口笛吹いて

口笛吹いて
重松 清
口笛吹いて

哀しいくらいに変わってしまった、憧れていた先輩との偶然の再会。ジュンペー、晋さん、と呼び合うこともできず、昔のようにカッコ良かった自分のヒーローでいてもらいたいと思うも、気持ちはすり抜けていく。負け続け、負けることに慣れ、ねじれた心は元には戻らない。現実の冷たさに、人はそれぞれ都合の付け方を覚えていく。そんなズルい大人に囲まれた中で、ただひたむきに練習する息子が輝いている。変わっていく寂しさと、負けることの口苦さの中に、変わらないものが仄かに光っている。

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