作品紹介

文庫本蜘蛛の糸・杜子春より、トロッコ
蜘蛛の糸・杜子春
→単行本版未発売

子供である良平の小さな願い—トロッコを押してみたい。そんな良平のずっと夢見ていた願いが不意に叶ってしまう。良平はトロッコ押しの喜びを噛みしめながら進み、押しながら色々と想像してはまた喜んでいた。しかし突然、良平は現実に引き戻される。今まで散々歩いた道のりを引き返すことになってしまう。純粋な気持ちには、思い込みが過ぎたのだ。襲い来る絶望を前に、良平はただ走る。良平の願いが叶ったときの様子や、喜びがたちまち絶望へ変わる様子、ぶつけきれない不安のはけ口の様子、と一連の心の描写が秀逸です。そして大人になっても消えない、幼少に感じた人生の心細さが現実を象徴しているように感じさせます。

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