2005年度春紹介

製品画像紹介
夏の庭

自分の気持ちに素直なデブと、何も考えていない好奇心の塊のメガネと、やさしくて怖がりなヤセのぼく。この小学生のトリオが死についてあれこれと考えるが、怖くなる一方でよくわからない。そこで怖いもの見たさから、今にも死ぬんじゃないかという噂の一人暮らしの老人をこっそりと見張りはじめる。死ぬ瞬間を見るために。しかし予想とは裏腹の冒険が始まり、自分を見つめることになってゆく。小学生の言葉だからこそ感じられて、次々と生まれてくるシャボン玉のような気持ち。和製スタンド・バイ・ミーと言われる、子どものまっすぐな気持ちを描いた作品です。

ぼくは勉強ができない

大人の思う大切なことってなんてちっぽけなんだ。ただのイイ子なんかじゃいられない。ぼくの心の内からみなぎるエネルギーは勝手に体を動かしてしまうのだから。悩める時をまっすぐに悩み、遊べる時を精一杯遊ぶ。そんな日常の中に一人ひとりの色に染まった "宝物" が眠っている。誰もが味わう思春期の葛藤の中、主人公と主人公を取り巻く愉快な仲間たちによって物語は心地よく綴られていく。

羅生門

羅生門に佇む一人の下人がいる。この下人は今にも餓死しそうな自分が、明日どう生きるかを考えているのだ。すると、下人はそこに気味の悪い老婆を見つける。そしてその老婆を見つけると同時に、下人は自分の中に強まってゆく感情をも見つける。下人の沸々と湧き出る微妙な感情の変化と彼を取り巻く情景を、時間を操るが如き描いた短編小説。

黒冷水

人の机って気にならないだろうか。何が入っているのか、どんなものを入れているのか。机の中にはそこに座っている人の全ての秘密が詰まっているのだ。この小説では、兄の机をこっそりとあさることに快感を得た弟が幾度にわたり机あさりの犯行に及ぶ。それを兄が神経質に咎めるほど弟は執拗に犯行に駆り立てられる。そして、兄は弟を、弟は兄を蔑む。この決して交わることのない二人の関係が、無言の戦いを静かに加熱させる。

二十四の瞳

昭和の初め、小学校に新任の先生がやってきた。田舎の村にそぐわぬ一風変わった先生だったが、子どもたちは先生になつき、先生も子どもたちが大好きだった。しかし、そんな先生と子どもたちの間にも大きな時代の流れが襲ってくる。戦争に染まった恐ろしいほどの時代の渦と、子どもの一途な気持ちを切々と描いた作品。教育にたずさわる人必読です。

ユージニア

突如起きた出来事と、謎のメッセージ。一体何が起きたのか、近づこうとすればするほど真実が隠れていく。つじつまや外から見た事実を超えたものがそこにはある。何かが頭の隅から離れない、忘れようとしてもそれができない。思い出せない。何もわからない。表現の一つ一つに重みがあり、顔をしかめずにはいられない作品です。

重力ピエロ

何でもないようなことでも最後には一つに繋がる。物語に意味のないものなど何もなく、一見、無関係に思えるものでも絡み合い、物語に重大な影響を与えていることもあります。ほんの少しミステリー要素も混じえて、シリアスな内容も含んでいるのに、軽快にテンポ良く話が進みます。惹きこまれました。