2005年度秋紹介

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4TEEN

入学したてでもなく、受験間近でもない中学二年の14歳。一番毎日が楽しい時期。でも楽しい事ばかりではない。心の中は不安で詰まっていて、みんな秘密や悩みがある。そしてそんな心の不安が学校生活を邪魔してくる。でもそんな時不安を取り除いてくれるのが友達だ。主人公のテツローもいつもの4人組みと悩みを分かち合いながら学校に通い、起きるトラブルにぶつかっていく。4人の言動から、中学生の友情が優しく伝わってきます。親などの邪魔な大人が登場してこない、4人の少年によるテンポの良い小説です。

走れメロス

メロスは激怒した。なぜなら王が人を信じられず、次々と人を殺していたからだ。メロスは王を排除しようと、短剣を持って城へ行くが捕まり処刑されることになる。元より覚悟はしていたが、唯一の家族である妹の結婚式だけは挙げておきたかった。メロスは自分と信頼し合っている友のセリヌンティウスを身代わりとして、王に3日の猶予をもらう。メロスは長い道のりを妹のため、友のため、苦難を重ねながら走る。人を信じる者と、信じない者の、心を試す闘いが繰り広げられる。

蜘蛛の糸

悪事と言う悪事を働いた感陀多が唯一した善い事。殺そうとした蜘蛛を見逃してやったことがある。そのことにより地獄で苦しむ感陀多に好機がやって来る。それは銀色に光る極楽から垂らされた1本の蜘蛛の糸。その時、助かるか助からないかの窮地に立たされた感陀多の人間性が試される。作品中の極楽から眺める御釈迦様の上品な雰囲気を持った文章が、地獄の深さと遠さを物語っています。

インストール

朝子は女子高生というブランドを家具と共にゴミに捨て、自分もゴミのようになってみた。何かが残り、生まれ変われるかと試してみた。しかし、何かが残った感覚はなく途方に暮れていると、ゴミとして捨てた壊れたパソコンが小学生に拾われ、あっさり直されてしまう。パソコンに先を越された気分だったが、小学生はついでに朝子まで拾ってくれた。チャットでバイトをしないか誘われ、小学生と手を組むことになる。チャットの中の虚ろな現実が、楽しさとむなしさを与え、やがて感覚を麻痺させていく。

パーク・ライフ

ごく普通なサラリーマンの生活を小さく切り取った短めの小説。普通の生活ではあるが、この小説の主人公は感性が強く、他人が普段見ようとしないものを見ています。サラリーマンのちょっと一息ついた部分と、臓器を巡っての重々しさが対照的につり合っていて、人の中身を取り出したような感覚を受けました。大きな出来事は特になく、普通に存在している奇妙な点をとても敏感に描いている作品。芥川賞受賞作。

リレキショ

最初から何者なのか分からない主人公の良。全くの新しい生活が始まっていく。まず新しい生活の第一歩として、自分は誰なのかを確かめるように履歴書を埋めていく。ついでにもう一枚リレキショとしてなりたい自分を書き込む。後は毎日を反復していけばいい。楽しいことが自分からやって来る。良の感じている世界が突然記憶をなくしたのかと思うくらい、全て初めての感覚のように表現されているところが面白い。魅力あふれる人の創り上げた世界をどうぞ。

杜子春

目の前に忽然と現われた老人によって杜子春は貧乏から突如大金持ちになります。すると友人が増え、祭り上げられる。しかしそれもお金がある時まで。杜子春は人の態度がお金のある時とない時で余りに違うことに気づく。やがて人間に愛想をつかし、仙人の道を志していく。だが、杜子春が選ぶ道は冷たい人間でも、仙人でもなかった。場面がくるくると変わっていき、天と底を体験する杜子春から学ぶことは多いかもしれません。

HTML/CSSラーニングドリル

厳格な文法に沿ったHTML/CSSの構成方法を学べる本です。HTML/CSS本来の使い方を問題を解くことによって学ぶことができます。HTMLの要素と CSSのプロパティの解説もあるので、参考書として使うこともできます。問題を解くことによってHTML/CSSを上手く覚えられるので、ホームページを作ろうと思っている初心者や、文法について詳しく知りたい人に役立ちます。

池袋ウエストゲートパーク

工業高校を卒業して、家業の果物屋を手伝うかたわらストリートで起きたトラブルの相談に乗るマコト。このマコトを中心に、池袋の周りで起きたトラブルを解決していく物語。今を生きる若者たちが活き活きと描かれています。マコトによって軽快に語られる文章は独特で、テンポ良くスムーズに読み進むことができます。石田衣良のデビュー作にして、ドラマ化もされたシリーズ第一弾。

西の魔女が死んだ

学校に行くのが億劫で、不登校気味な中学生の少女。一ヶ月の休みを取り親もとを離れ、大好きなおばあちゃんと二人で暮らすことになる。おばあちゃんちで与えられた自然の中での仕事と時間。少女は自分で決めた生活を「訓練」として過ごしていく。社会と一歩離れたおばあちゃんと二人きりの生活と、あり余るほどの時間が少女の心を育てていく。魔女の教育、現代版のエミールのような小説。

楽園のつくりかた

「そんなことしたら予定が狂う。」人生設計通りに生活していた中学2年の優君。エリートコースを進むため日夜勉強に励んでいた。しかし、突然決まったド田舎への転校で計画が脆くも崩れていく。やることなすこと、ここでは都会での模範解答が通用しない。勉強より、お金よりもっと大切なことがあると突き付けられ戸惑ってしまう。トランプくらいしか楽しみのないこの村に優君はどう決着をつけるのか。登場人物それぞれの個性が上手く描写されていて楽しめます。

最悪

日々を幸せではないが、平穏に過ごしていた零細企業の社長、銀行のOL、パチンコに溺れる若者の3人。この何の接点もない3人が、ほんの些細な出来事の積み重ねから最悪へと転落していき、その過程で絡み合っていきます。それぞれの視点で転落していく日常の様子が描かれ、人の恐怖や混乱などの感情がリアルに表現れています。スリルがあり、一気に読みきれます。最後まで飽きさせることのない展開でした。

娼年

一人の女性の来日により、今まで普通の大学生をしていた少年の生活は一変。退屈な毎日を抜け出し、娼夫として働いていくことになる。そして、女の人の限りない欲望が少年をこの世界にのめり込こませてゆく。少しずれて理解され難い人の欲望の存在と、通常社会から外れ理解されないホストの世界が対比されて楽しく描かれています。日常と非日常が交錯しながら、美化されたものでない本当に綺麗で素直な人たちが求める世界。本当の自由を手に入れたくなる作品。