長野 まゆみ

文庫本銀木犀
銀木犀
→単行本版未発売

銀木犀を知っているだろうか。銀木犀は金木犀の原種で白い花をひっそりと咲かせる大きな木だ。見た目も金木犀より目立たず、香りも金木犀に比べるとおとなしく、近くにあってもなかなか気付かない存在だ。このお話では、男の子が人目につかない銀木犀の木を隠れ家にしている。そして毎晩家を抜け出し、銀木犀に登ってそこで寝るのだ。すると心地良さと気だるさから、夢と現実の間をゆらゆらとさ迷って行く。会話が少なく、想像力を掻き立てられる楽しい小説。

文庫本少年アリス
少年アリス
単行本版も参照

舞台は学校。夜の学校に忍び込むと、何故か何かが待っている気がしてくる。それが楽しいことか怖いことかはわからないが。この話の始まりも夜の学校からだ。自分の気持ちにも人の気持ちにも敏感なアリスと、即物的で鈍感な親友、蜜蜂。二人の小さな探険が思いもよらない大冒険になってゆく。現実と非現実を行き来する感じが、どこまでも現実なのかわからない空間に引き込んでくれる、少年ファンタジー。

文庫本夏帽子
夏帽子
単行本版も参照

生徒の前に突然現われてはすぐに居なくなってしまう、旅人のような紺野先生の物語です。紺野先生が生徒に働きかけると、途端に生徒の瞳がパッと輝き出す、紺野先生はそんな魅力の詰まった先生です。臨時で赴任してくるため、短い時間ではあるものの、紺野先生は生徒と共に楽しく過ごします。授業時間よりも授業外の様子が多く描かれ、自然の中から不思議で楽しい多くのことを紺野先生は生徒に見せてくれます。溶けない氷や、クラゲの化石などを持ち歩き、自然の生態を語ってくれる紺野先生は、少し変わっていて、とても楽しい先生だと思いました。

文庫本三日月少年漂流記
三日月少年漂流記
単行本版も参照

主人公は同じ学校のクラスメートである二人、水蓮と、銅貨。この小説では紙芝居のように場面が切り替っていき、この二人の男の子が丁寧に言葉を交わしていきます。そんな二人の興味の的は、謎の存在――三日月少年。二人はこの三日月少年の謎を追跡するため家出を決行するのです。先の先まで考えてきた計画を指揮する水蓮と、それに感心しながら付いていく銅貨の様子は、とても可愛く、楽しそうです。最初から最後まで魅力的な謎に満ちた、三日月少年を巡る不思議な冒険が始まります。